株式会社SSブレインの関 美分と申します。
「注意・アドバイスの方法」は、注意することに苦手意識を持っている方が多いのですが、社内のメンバーに成長してもらうには、指導者が正しい注意の仕方を知っておくことが必要不可欠であり、重要なことであると思っています。
注意をすることは指導者にとってエネルギーのいることですが、ぜひとも知っておいていただきたいと思います。
部下に注意できない人が増えている?!
弊社では、社員やパートスタッフを指導するリーダー研修が昨年に比べると2倍になりました。
研修の打合せに伺うと、採用が難しくなってきている、今いるスタッフを辞めさせないようにしないといけない、同時に育てていくことも急務、しかし、スタッフの育成ができるリーダーが育っていないということが共通のお悩みでした。
実際に研修を行い、これはちょっとまずいなと思ったときに注意ができる人、と手をあげてもらうとどの企業でも手が上がるのが1割弱でした。リーダー研修は20年以上行っていますが、以前と比べて注意ができる人が確実に減ってきているという印象を持っています。
なぜ注意ができないかというと、パワハラと思われないか、注意した後の人間関係がギクシャクするのではないか、何と注意していいのか言い方がわからない等の理由があがります。
実際に研修に参加した方々の部下後輩の気になっていることの一部を紹介すると。
・あいさつの声が小さい
・提出物が期限内に出ない
・時間にルーズ(出社時間)
・ルールを守らない
・電話に出ない
・返事をしない
・理解しているのか返事がないのでわからない
・仕事の報告がない
・使ったものをもとにもどさない
・お客様がお見えになっても気がつかない
ここにあるような、少し「マズイな」と思っていることを何も言わずに放っておくと、じわじわと周囲に悪影響を与えてしまいます。
提出期限を守らないということだと、まずきちんと注意をしないと本人が問題行動だと気がつかない、それを見ている周囲のメンバーは、「提出期限って別に守らなくてもいいんだ、忙しい時は自分も後回しにしよう」という具合にモラルダウンを引き起こしてしまいます。
「マズイな」と思ったときに注意をする。
注意の仕方は正しい方法でトレーニングすればすぐに身につきます。
それでは、注意するときの大前提と注意のステップの順に説明します。
注意するときに絶対やってはいけないこと
まず、注意をするときの大前提は、「人ではなく、あくまで問題行動を注意する」です。
問題がある言い方は、次のような言い方です。
・今回の資料、3か所もミスがあったぞ。やる気あるのか?
・お客様がお見えになったらすぐに対応してね。ほんと気が利かないわね。
マーカーの部分、つまり「やる気あるのか」「気が利かない」という人格の部分に触れてはいけないということです。ここに触れてしまうとパワーハラスメントになってしまうので要注意です。注意をするときには淡々と問題行動だけを注意します。
たった3つのステップで、部下の行動が変わる
「お客様がお見えになったらすぐに対応してね。頼むね。」
と注意して、すぐに直すことができればいいのですが、なかなか改善しない場合があります。そのような時には様子を見て、他のメンバーがいないところで注意をします。
その場合の3つのステップです。
注意をするときの3つのステップ
1.労いの言葉をかける
2.部下の「いつの」「どんな」行動が困るのかを具体的に指摘する
3.なぜそうしてほしいのかを説明する
私たちが注意をするときには、必ずこのステップで注意をしています。
1.労いの言葉をかける
上司や先輩から「ちょっといいですか」と声をかけられると、「何か言われるのかな」と緊張します。これはもう全員がそう感じると言ってもいいと思います。
心理的に緊張した状態で、注意をしてもなかなか言葉が入っていきません。そこで労いの言葉をかけて、ちょっと緊張をほぐして注意をしやすくする場づくりをします。この労いの言葉を最初に入れるのと入れないのとでは、相手の受け止め方が全然違ってきます。注意をするのに労いの言葉?と思われる方が多いのですが、ぜひ一度試してほしいと思います。
2.部下の「いつの」「どんな」行動が困るのかを具体的に指摘する
「ここ一週間様子を見ていたんだけれど」等、具体的に伝えてください。
またここでぜひ使ってほしい言葉が、「協力をしてください」です。
「直してください」ではなく、「協力をしてください」です。
「協力」という言葉の意味は、「目的に向かって心を合わせ努力すること」です。
「協力」は日頃よく聞く言葉ですが、確実に相手の心に届く言葉なので、ぜひ使ってほしいと思っています。
3.なぜそうしてほしいのかを説明する
理由をしっかりと言葉で説明するということです。曖昧にしません。
常識で考えればわかるよね、以前同じような職場で働いた経験があるから分かるよね、で済ませるのではなく、必ず言葉で説明します。
また注意する側は準備をすることができます。注意をする前に10分時間を取ってどのように話をするか考えておくだけでも頭の中が整理できます。
大きな声であいさつをするようになった事例
つい最近、弊社で実際にあったケースをご紹介します。
朝のあいさつの声が小さい新人パート社員に対して次のように注意をしました。
1.労いの言葉をかける
「○〇さん、昨日は急ぎの仕事を頼みましたが気持ちよく引き受けてくれてありがとう。
先方の急な依頼でしたが一緒に対応してくれたのでとても助かりました」
2.部下の「いつの」「どんな」行動が困るのかを具体的に指摘する
「実は○○さんに1点協力してほしいことがあります。
それは、朝のあいさつです。
しっかり顔をあげて元気な声であいさつしてもらえますか」
「先週から朝の様子を見ていて気になったのですが、朝のあいさつの時に、下を向いた状態で、あいさつの声もちょっと小さく、言葉がはっきり聞こえなかったんですね。
そこでしっかり顔をあげて元気な声であいさつするように協力してほしいのです」
3.なぜそうしてほしいのかを説明する
「一応はあいさつしているからいいじゃないか、と思うかもしれないけど、朝のあいさつはとても大事なのです。まず「おはようございます」というあいさつから1日がスタートします。このあいさつが明るく元気にできるかどうかで、職場の雰囲気が変わります。例えば不機嫌そうなあいさつをする人と明るく元気なあいさつをする人、どちらが声を掛けやすいですか?
明るく元気なあいさつができることで、メンバー同士声が掛けやすくなり、円滑なコミュニケーションがとれ、お互いに気持ちよく仕事ができる環境を作ることができるのです。あいさつは場を整える大事なコミュニケーションだと捉えてください。
それと、元気なあいさつは「今日も元気で出社しました」という○○さんからのメッセージにもなっていることも忘れないでほしいのです。明日のあいさつ、私見ていますから、顔を上げて明るく元気なあいさつ、やっていきましょう。協力をお願いします」
注意にかけた時間は10分ほどでしょうか、このような注意をしたところ、新人パート社員は次の日からしっかり大きな声であいさつをしてくれるようになりました。
「注意・アドバイスの方法」はいかがだったでしょうか。指導役になると、避けては通れないテーマです。
私たちも今指導役になっていますが、失敗を重ねた中で、一番効果があり実際に現場で使っている方法を紹介いたしました。