・ビジョンとは、社長自身が描いた世界
ビジョンとは何でしょうか?
最近よくある経営本でもありますよね。これからはビジョン経営が大事だ!そうですね。ビジョンはこれから大事なのかもしれません。でも意外とビジョンって何と言われても、意外と明確には答えられないという方もたくさんいらっしゃいます。
ビジョンを定義づけるとき、それは、どの角度から見るかによっても違います。まずは、ビジョンとは、ビジュアルで示されるものですので、一つは、映像であるということが言えます。つまり、社長自身が描いた世界であると言えます。
私が主催する「理念策定塾」でビジョンを描きましょうという時間があります。そのときに受講生である経営者の皆様にやっていただくのは、その時に実現したいと思う世界を絵にしてもらうということです。とても上手に書かれる方と、そうでない方、彩り豊かに描かれるとモノクロで書かれる方と色々と別れます。実は、上手か上手でないか、色があるかないかは、とちらでもいいことなのです。
それよりも大事なことは、イメージするとそれは実現しやすくなるということです。
・イメージすることは、知識よりも大事である
アインシュタインは、このように言っています。「イメージすることは、知識よりも大事である」と。その通りだと思います。では、なぜイメージできると実現しやすくなるのでしょうか?多分それは、情報をキャッチしやすくなるからだと思います。突然ですが、皆さん目をつぶってみてください。そして、例えば、目をつぶったまま「ピンク色」をイメージしてみてください。そして、目をあけてみてください。そうするとどうでしょうか?今までまったく意識していなかったピンク色が目にどんどん飛び込んでくるのがわかります。つまり、人は脳でイメージしたものに関連する情報をキャッチするというようにできています。よく何かのマニアの方がいらっしゃいますよね。なぜマニアなのか?それは、そのことが好きすぎるからというのは事実ですが、もう少し脳のプロセスからいうと、脳の中でそのことを意識するために、必然的にそれに関する情報をキャッチすることで結果として情報量が多くなり、マニアになるといったほうが正しいのかもしれませんね。ということは、自分が実現したい世界をありありと五感で感じ描き切ることで、本気でそれを実現したいと思えば、そのビジョンに関する情報をどんどん吸収するので夢が実現しやすくなるということなのです。さらに、その絵を社員全員で共有して、絶対に叶えたいと思ったらどうなるでしょうか?当然情報量は圧倒的に増えることになるので、成功する確率がどんどん高まっていきます。さらに顧客や、関係者をみんな巻き込んだら・・・。当然すごいことになりますよね。これがビジョンのパワーなわけです。
・ビジョンは、制約を取っ払って大きく描くことが大切
でも、経営者の中には、なかなか描けないという人もたくさんいます。ビジョンといったって・・・。大きなビジョンを描けない理由の一つとしては、自己肯定感の低さに原因がある場合があります。それに伴い、照れや気恥ずかしさというものが伴い、そんなビジョンをいったらバカにされるのではないか?会長である親父はなんていうんだろうか?とか、夢なんか語って、かなわなかったら恥ずかしいなとかそういった気持ちが、大きなビジョンを描くプロセスを遮断してしまうことが往々にしてあります。ですので、そんなときは、自分は、必ずこのような質問を経営者に投げかけます。それは「何の制約もなかったら本当はどうなりたいのですか?」と。何の制約もなかったら・・・。この質問を投げるとだいたい経営者同じような反応を示されます。少し照れながら、はにかみながら嬉しそうな顔をします。多分そんな質問されたことがないからでしょう。また、いろんな制約条件の中で経営者は経営を必死で戦っているのだと思います。元請け先からの圧力、従業員からの不平不満、父親との軋轢、資金繰り・・・。そんな夢みたいなことを言ったってしょうがない・・・。いつしか経営者は、現実に翻弄され、夢が見れなくなってしまうのです。こんな状態では、人も情報も集まってきません。自分の本当はこうしたいと思える確固たる旗印が欲しいのです!夢を見るときぐらい、制約を取っ払って大きく描くのが大切なのです!
・定性ビジョンだけでなく、定量ビジョンも大事
また、ビジョンは、今のような映像といった定性ビジョンという側面があるのと同時に、定量ビジョン、つまり数値目標といった側面が大事になります。いつまでに、いくらの売上だったり、経常利益を残すと決めることが大切なのです。いわゆる経営目標という側面があるのです。面白いですね。先ほど何の制約もなかったらどうしたいのか?と聞いてビッグビジョンを描きましょうといいましたよね。今度は逆にいつまでに、いくらの数字を上げるのかといった制約を設けてやらざるを得ない環境に身を置くべきだと言っているんです。夢は、どんなに大きなものを描いたとしても、制約をかけないと夢は実現しないのです。「制約なき夢を描き、自ら制約をかけて夢を叶える」やはり、経営はどこまでいっても矛盾の統合なのです。
また、経営目標には、長期経営課題を明確にするという大切な役割があります。目標を明確にすると、いままで認識できていなかった経営課題が浮き彫りになるのです。そして、目標は高ければ高いほど、やらなければならない課題は大きく違ってきます。
例えば、野球で考えてきましょう。もしも、高校1年生が3年になったときの目標を県大会1回戦突破と置くのと甲子園優勝と置くのではどうでしょうか?そのときの見える課題と明日からやらなければならない練習は全く違うものになるでしょう。これは経営も同じです。経営目標を立てる意味は、それを立てなかったら見えてこなかったであろう課題を浮き彫りにすることなのです。そうでないと、日々行き当たりばったりの経営をするだけになってしまうのです。ただ明日の納期のためだけに仕事をするのと、5年後のビジョンを達成するための緊急ではないが重要な課題を浮き彫りにして、時間を作ってそれをつぶしていくのと、どうでしょうか?5年後の未来は確実に変わってくるのです。この緊急ではないが重要な課題に向き合う時間を捻出していくことが経営者の仕事なのです。そういうと、必ずこんなことをいう経営者がいます。「そんな先生5年後の未来なんてどうなるかなんてわからないじゃないですか?だから描いても意味がないと思います」と。僕から言わせれば、分からないから描くのです。もし、未来がこうなるとわかっていれば描く必要はないのです。自動的にそうなるのですから。なにもしなくても実現してしまうのです。そうではなく、分からないから、必至に描き、絶対にこの目標を達成するのだと自分で未来を決めるのです。決めることに意味があるのです。そして、気づかなかった課題を浮き彫りにして、全社を挙げてみんなで立ち向かうのです。その先にみえる大きな夢のために・・・。
・課題を乗り超えるためには、「目的・理由」がいる=「大志のあるビジョン」が必要
また別の角度からビジョンをお話ししますね。
私は、ビジョンには3つの側面があると思っています。
1つは、私利私欲です。お金を貯めたい、いつか金持ちになりたい。これも立派なビジョンです。私は否定しません。こういう欲もなければ、経営者は激動期で会社を引っ張っていけません。
そして2つ目は、野望です。業界で絶対に一番になる。3年で売上100億の企業になってみんなをあっと言わせたい。5年後見てろ!ライバルには絶対負けてたまるか!これもビジョンですよね。大事なことです。これもないとパワーが生まれませんからね。ビジョンはきれいごとだけでは火がともらないのです。しかしです!これだけだと、みんながついていきたいと思うのでしょうか?実は思えないのです。みんなが絶対についていきたいと思ってもらうためには、「ああ、この●社という船に乗ってその夢かなえたい!」と思ってもらえるビジョンが欲しいのです。それは何か?実はそれが大志なのです!これがないと、いくらビジョンを叶えても、みんなが幸せになれないのです。働いている社員、そして商品サービスを受け取るお客様みんな幸せになりたいのです。ではみんなが幸せになるための大志はどのように描けばよいのでしょうか?答えは、「理念を軸に描く」ことなのです。そうです。大志のあるビジョンを描くためには、理念がいるのです。自分が大切にしたい思い、価値観を明確にすることが、みんなを幸せに導いていくのです。
これからの時代は、混沌とした時代です。昔のようにがんばりさえすれば、右肩にあがっていく時代ではないのです。みんなが課題を乗り越えるために目的・理由がいるのです。それが大志のあるビジョンなのです。その目的の為にみんながんばり、自己実現し、みんな生き生きと働き、幸せになっていくのです。そうでなければ、がんばることがただの苦役になってしまいます。みんなを巻き込みチームで経営していくためにも、是非経営者の皆様には、大きなビジョンを描いてもらいたいと切に願っております。